帝国編,ヨイル視点

セインの眠りは浅い。一見無防備のように思えて実はそうでもないことをヨイルは昔から知っていた。というのも、自身の得意能力を生かしてセインの後を付け回した事が何度もあるからだった。
 姿を消していても気配を察するのかすぐにばれる。それはたとえ寝ている時であっても同じだった。
 そのくらい気配に敏感で隙を見せない。

 だから。
 ヨイルはセインが見かけのままの優男ではない事も悟っていた。

 大人になってからはその意識が更に強くなり、ギーンズが抱くイメージとまるで正反対の印象を抱いていたくらいだった。
 ギーンズがセインの情けなさを口にする度に、どうして気付かないのか不思議に感じる。彼の中のセインは酷く子どもでそれもまた羨ましいと思うが、同時そんな印象を与えるセインが憎らしくもあった。
 それだけギーンズに対しては隙だらけだったのかもしれない。


 セインが、ヨイルに対してそんな姿を見せたのはたった一度だけだ。
 それも本人は気が付いていないだろう。


 久しぶりに、本当に久しぶりに姿を消してセインの部屋へと忍び込んだのはただの思いつきだった。
 どうせすぐに気が付くであろうセインに絡みたかったという軽い気持ちだった。


 窓一つない暗い部屋で。
 まるで死んだように眠るセイン。
 呼吸さえ止まっているかのように寝息一つ立てず、胸元に両手を組んだセインがいた。


 いつもならドアが開いた瞬間に気が付く筈なのに、何の反応もない事に留守かと思ったくらいで、子どもの頃に比べ気配を消す事がうまくなったという事もあるだろう。
 それにしても、いつにない無防備さだった。


 それはすぐ傍まで行っても変わらず、覗き込んでも目を覚ますという事はなかった。


 恐る恐る頬に触れる。
 柔らかな頬が冷たくてぎょっとし、死んでしまったのではないかという恐怖に寒気が走った。首に触れれば脈すら感じず、動揺するヨイルがようやく平常を取り戻したのはセインの胸元まで手を滑らせた時だった。触れた箇所から熱を感じ、小さな呼吸を繰り返していることに気が付く。


 本当に寝ているだけだと知って、馬鹿みたいに安堵した。セインの胸に顔を埋めて小さく笑いを零す。
その重みにさえ、セインが目覚める気配は一向になかった。


 それほど深い眠りをしているのは初めてのことだ。
 力ない手を取って口付ける。いつもは伝えられない言葉を口にして、しばらく同じ刻を過ごした。




 セインの死体を見た時、唐突にこの出来事を思い出していた。


 あれは。
 本当に死んでいたのだろうか。


 死んだように眠るセインと、そして眠っているかのように穏やかな死体のセイン。
 どちらも全く同じことのように思えて、背筋が凍る。



 馬鹿らしい考えだと頭を振って、その妄想を頭の隅へと追いやる。
 セインの存在が、その正体が全く見えず、どこまでも深く続く闇のようだった。



2014.12.26
メリークリスマス(+一日後!)!
毎年書いてた気がしたので、今年も1日遅れですが、クリスマスを!(笑)。ラブラブ目指してこれになりました(*゚∀゚*)。ヨイルめ!きっとチューやらなにやらしたんじゃないのか?!というか若干、ヨイルは変態チックというか、ストーカー気質というかそういう所があります(^_^;)。そして、きっと反モラル的な男なのだ。ギーンズ側だけど、セインが死んだ事が信じられずにいて、その疑問をずっと抱き続けるんじゃないかしらん?んでいつか襲われると思って、ゾクゾクしちゃうような、そういう性格だと思います…(おい。)
しかし、今年は何だか忙しくて全然、何の準備も出来ないまま終わってしまったです…orz。気付いたら年末…。福袋を探さねば…Σ(゚Д゚;o) ?