現在,2013年新年祝

セインという男を一言で説明するのは難しい。
まるで天使のような。
そして悪魔のような男である。

優しい風貌に穏やかな空気を纏い誰もがその気配に騙される。
気付いたら隣にいるような親しさで接近し、気を許した途端に切り付けてくるような男だ。

どちらがセインの本当の姿かなんて考える必要もない。
セインは魔族なのだから。暇を持て余した魔族の王なのだから。



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「愚かな考えだよ」
ふと。
隣から声を掛けられる。
考えを読み取られたのかと思い心臓が急速に脈打った。
隣を見遣ればこちらを見て小さく微笑むセインの綺麗な顔がある。
亜麻色の髪に茶色の瞳だ。しばらくはこの容姿で暮らす事にしたらしい。少年のような体躯に無邪気な笑顔が似合う。
どんな姿のセインでも見蕩れる何かがあった。
「ギーンズの事ですか?」
内心の動揺を隠して問い返す。その問いにセインがニヤリと笑った。
「彼の統治は短かったね。僅か数年足らずで魔国が滅びるとは誰も予想しなかっただろう」
「光の者の出現も大きいでしょうね」
答えながら、セインの残酷さを垣間見る。
数百年と統治してきた自分の国を退屈という理由でこうもあっさりと切り捨てるのだから、彼にとってそんなものはどうでもいいのだろう。
百年に一度、光の者が復活するという予言も本当はセインが裏で絡んでいるのではないかと疑るほどの出来すぎた話だった。
「誤解してない?ランゼット」
小さな呼び掛けが色を変える。
心の奥に突き刺さるように静かで深い声音はとても少年から発せられたモノとは思えない声だ。

そんな一瞬が、ランゼットの心を捉える。セインを深く愛し、惹かれる瞬間だった。

「…僕はそんなに残酷な男じゃないぞ」
足が止まったランゼットに合わせてセインの足も止まる。
「光の者は人々の願いが生む希望の存在なんだ。それだけギーンズの統治は間違った方向だったんだよ。魔族だから残虐な統治が許される訳じゃない。世界は全てを見ているんだよ」
街の喧騒が嘘のように静かに感じた。
ギーンズを炊きつけておいて平然とギーンズを正すセインのやり口は置いといて、セインがそんな思考の持ち主だった事に驚く。

「まさかあなたが信者だったとは意外です」
口から出たのはそんな返答だった。
「…お前だって俺の信者だろ」
突き放すように語気を荒げてポケットに手を突っ込んだ。むくれた表情のセインが踵を返す。
足早に街を進むセインを追いかけて腕を引いた。
「そうですよ。たとえ本当は残酷な男でもどこまでも付いていきます」
珍しく、というのは語弊がある。いつも熱を宿したランゼットの目が真っ直ぐにセインとかち合って忠誠を誓う。
セインがそれを鼻で笑った。
「知ってるよ、お前から忠誠心を取ったら何も残らないだろ。執念深くてしつこいのはランゼットの特徴じゃないか。報われない恋だって永遠と夢を見ていられる、そんなお前を愛してるよ」
ランゼットの想いを知りながら、答える気も無いセインが平然と囁く。
少年の顔に妖艶な気配を乗せてゆらりと自分の手を交わしていくセインが堪らなく愛しかった。

「気付かない内にあなたも私の虜なんですね。きっと私を失ったら更に退屈で死んでしまうでしょう」
冗談を返してセインに微笑んだ。


セインがどんな男であろうと、ただセインについて行けばいい。
そうすれば決して自分の選択は間違いではなかったといえる。
この先に何があろうとそれがセインの為なら全てが正しい選択といえるのだから。



満足そうに微笑むセインを抱きしめたくて堪らなくなった。
魔国がどうでもいいのは自分も同じなのだった。




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新年おめでとうございます☆
今年は全然干支関係無しでごめんなさい(笑)。
セインのお話です。拍手の方でちょこっと書いたお話です(* v v)。
何気に結構好きなキャラです(笑)。

今回久しぶりに小説を書いたのですが新鮮(笑)。年1になっちゃって申し訳ないです(汗)。
今年も黒じゃなくてごめんなさい〜; 何か纏まっちゃってて番外とかこういう形で書くのが難しいです(笑)。

毎度になりますが、拍手訪問大変嬉しいです(*゚∀゚*)皆様あってのサイトです。本当にありがとう!!
今年もどうぞよろしくお願いします☆

13.01.01